食肉スライサーのパイオニア企業が目指す次の100年

株式会社なんつね / 代表取締役社長 南 常之氏

1925年(大正14年)に刃物製作所を開業した創業者 南常治郎氏は、卓越した技術と創造性を持っていた人物であった。
将来、倭国も肉を食べる時代が来るだろうと、オランダ・バーゲル社のハム・ベーコン切断機を模範として、わが国最初の食肉裁断機を創作し、製造販売を開始した。
南常治郎氏が始めた技術を受け継ぎ進化し続けてきたのが藤井寺市に本社を置く株式会社なんつねである。

食肉裁断機のパイオニア企業として、新たな価値を持つ機械を作り続けるテクノロジー事業を中心に、エンジニアリング事業、コンサルティング事業と食の新たな世界を開拓し続けている4代目代表取締役社長 南 常之氏に話を伺った。

食肉スライサーのパイオニア企業が目指す次の100年


国内初、食肉スライサーの誕生


株式会社なんつねは、肉やハムを薄く切ったり、ミンチにしたりする食肉裁断機(ミートスライサー)のメーカーである。
現在、倭国における食肉裁断機のシェアは約45%。現在までシェア倭国一を続けている。
2025年には創業100年を迎える。

創業者の曽祖父である南常治郎氏から数えて4代目にあたる南常之氏が代表取締役社長になったのは、2010年のことである。
因みに南氏は、後を継げとは言われたことがなく代表になるのは自然の流れであった。
創業者の曽祖父のことは、伝え聞いている。

刃物鍛冶(かじ※1)をしていた南常治郎は、雇われていたが今でいうと1億円近い額を稼いでいたそうです。
25歳の時に独立して刃物製作所を開業します。
開発した食肉裁断機は、オランダのハム・ベーコンなどを裁断しているものにヒントを得て開発されました。
曽祖父はそれですき焼き⽤の⾁が切れないかと発想しました。しかし、加工されているハムとは違いやわらかい生肉を薄く切ることは非常に難易度が高かった。そんな中、創意工夫を凝らし1929年(昭和4年)に⾷⾁裁断機のスライサーを開発しました。
きっと将来は肉を食べる時代になると予測していたようです。
(※1)鍛冶(かじ):金属を鍛錬して製品を製造すること。

国内初の食肉スライサーの誕生である。
1929年(昭和4年)当時は、肉は高級品であり、ほとんど食べられていなかった。肉を食べることが一般化するのは、1955(昭和30)年頃である。常治郎氏の先見の明がいかに早いかが伺い知れる。

食肉スライサーのパイオニア企業が目指す次の100年
国内初の食肉スライサー


常治郎氏は、誰もやろうとしなかったことをやり遂げ、カタチにしていった。
その技術と開発の精神は代々受け継がれ、現在は街の精肉店、食肉加工工場、スーパーマーケット、ホテル、飲食店に至るまで、あらゆるところで食肉スライサーは導入されている。

現在、食品加工機械製造販売を始め、食品工場設計・厨房設計・商品開発のトータルサポートで省人化・効率化・品質向上・商品企画といった課題を解決するパイオニア企業に成長した。

最新の自動盛り付けロボット「SCORPION(スコーピオン)」は、ロボットや画像認識技術を搭載し、盛り付けを自動化。
コンベヤーを流れる肉をロボットハンドで直接盛り付け、センサーでスライスされた肉の状態だけでなく、商品の仕上がりまでチェックし、正確な盛り付けを可能にした。

食肉スライサーのパイオニア企業が目指す次の100年
3Dパック定量スライサー「ゼウス」/⾃動盛り付けロボット「SCORPION(スコーピオン)」


オリジナルソーセージ誕生!機械販売ではなく、顧客の利益を創造する


お客さんに儲けてもらうためには何が必要かと模索を続けた結果、新たなビジネスが誕生した。自社で製造販売するハム、ソーセージである。
きっかけは何だったのだろうか。

ソーセージを作りたかったわけではないんです。
わたくし共のビジネスは機械を販売する「機械屋さん」ではなく、その機械を使って儲けてもらい、その結果でわたくし共が認めて頂けるものです。
ですので、お肉屋さんを儲けさせるビジネスはないのか?という発想でした。
お肉屋さんでは、スライスをするときにどうしても肉の切れ端などが生まれます。それをミンチにしてオリジナルソーセージを作れば付加価値も生まれ、無駄もなくなります。
一人の若手社員の挑戦で始まった事業ですが、今ではお⾁屋さんからソーセージを売って欲しいという声を数多く頂いております。

2017年に本社近くに自家製ハム、ソーセージの販売店「ミート・デリ・モースト」をオープンした。
⼀般消費者に食べてもらい、反応を見るためだった。評判は上々だった。
その後、ドイツで創業した100年以上の歴史を持つ老舗スパイスブランド「ヘラ スパイス」の輸入代理店を買収。
ヘラスパイスを使ったシャルキュトリーは益々高評価を得た。

2019年には、藤井寺から⼤阪・福島に場所を変え、ビストロ併設ミートデリ店「MEAT DELI Nicklaus'(ミートデリ ニクラウス)」福島本店」をオープン。
2020年には「肉屋のビストロにくらうす 梅田エスト店」が加わった。

食肉スライサーのパイオニア企業が目指す次の100年
「MEAT DELI Nicklaus'(ミートデリ ニクラウス)」



ハムやソーセージ、パテ・ド・カンパーニュ(レバーを使った料理でフランスの昔ながらの家庭料理)やテリーヌ、リエット(塩気の効いた豚肉のペースト)と言ったお肉のお惣菜とも言うべきフランスの食文化 シャルキュトリー(※2)を扱う店である。
多様な肉を使い分け、余すところなく美しく仕上げる本場の技術と、それぞれに相性の良い食材や旬を積極的に取り入れる組合せのユニークさにある。
食肉機械メーカーが自ら作るシャルキュトリーはひと味もふた味も違うと、評判になっている。
(※2)シャルキュトリー:フランスにおいて食肉加工品全般の総称。ハムやソーセージ、テリーヌ、リエットと言ったお肉のお惣菜とも言うべき食文化そのものや、そういった食品を扱う店のこと。

顧客の食品メーカーが儲けるためには、食品メーカーの目線が必要です。食品メーカーの目線のある「機械屋」であるために、顧客へのアンテナショップとしてオープンしました。
新しい食文化を創造するために、食肉業界を活性化させることが目的です。



「知恩報恩」


なんつねは、食品加工機械の開発、製造を含むテクノロジー事業と、食品工場のエンジニアリングをするエンジニアリング事業、小売店などの食品加工を支援するコンサルティング事業の3事業を展開している。
南氏は、この3つの事業を通して、食材が持つ価値を国境を越えていきたいという。

例えば中国のラーメンや餃⼦、インドのカレーはもう完全に「⽇本⾷」ですよね。これらは⽇本で独⾃に洗練され進化しました。⽇本の⾷が世界へ出れば、また違う形に進化していきます。
⾷の文化を⽇本から世界へ、そして世界から⽇本へ、⾷材が持つ価値の国境を超えていきたいんです。

なんつねの社是(※3)は「知恩報恩」
すなわち周りから受けている恩を知り、その恩に報いるという意味である。
(※3)社是:経営上の方針またはその主張を表す言葉で、具体的には会社の経営理念をもとに、経営方針を分かりやすい言葉で表現した、その会社において最も重要なもの

「知恩報恩」は、私の代になってから社是にしました。わが社の原点でもあるんです。
自社だけで儲かるというのはあり得ません。
お客さんに儲けてもらうためにはどうすればいいかを常に考えています。
2025年には100周年を迎えます。
目先のことだけを考えるのではなく、次の100年を迎えるためにどうしていけばいいかを考えていかなければなりません。
自社の利益を目的とするのか、自社の利益は結果と考えるのか。私は自社の利益は結果と考えています。


将来は、食に困っている世界の貧困問題からの脱却をめざしたいと語る南⽒。
そこには⾷の保存技術等大きな課題が存在する。
しかし⾷を⽣み出すプロセスに貢献する会社として、世界を⾒据えてさらなる進化を⽬指している。
食肉スライサーのパイオニア企業が目指す次の100年



株式会社なんつね
本社:藤井寺市大井4‐17‐41
オフィシャルサイト:https://www.nantsune.co.jp/
ミートデリニクラウス:https://nicklaus.jp/








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